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横浜ちょっと昔のちょっといい話

横浜博を憶えていますか

1999年1月30日

 いまからちょうど10年前、1989年に横浜で博覧会が開かれました。YES'89と名づけられた博覧会は、今のみなとみらい21地区が会場になり、1300万人以上の人が訪れました。その頃横浜に住んでいた人は、一度は会場を訪れたと思いますが、最近横浜に来られた人はみなとみらい地区で博覧会が行われたことを知らない人も多いでしょう。ここでは、その時と今とをつなげるいくつかのものについてお話しましょう。

 桜木町駅はそれ以前は古く立派な駅舎があり、どちらかと言えば西側(野毛の方)を向いていましたが、横浜博にあわせて整備、今あるようにみなとみらい地区に正面出口ができました。でも、当時はまだ自動改札では無かったようです。駅前広場にはJRの展示があり、「夢空間」と題して明日の寝台列車が展示されていました。1両に3室しか客室のない、立派な寝台車でしたが、現在、JR東日本の臨時北斗星などに組み込まれて運転されることがあります。

 動く歩道もこの時に作られました。全く今と同じ場所ですが、現在ランドマークプラザの入口のところに地上に降りるエスカレータがあり、博覧会の桜木町ゲートに続いていました。

 会場へのアクセス交通として、その当時使われていなかった貨物線を使い山下公園から日本丸脇までの鉄道が通っていました。ここを旅客鉄道が走るのはこの時が最後で、この線路そのものも部分的に撤去されています。1997年に整備された「汽車道」はこの鉄道の一部です。もう、二度と鉄道が走ることは無いでしょう。この時使われた車輌はその後三陸鉄道で活躍したと記憶しています。

 横浜美術館はこの博覧会の前にプレオープンしました。今ある位置を見ても分かりますが、みなとみらいの中心に海に向かってそびえたっています。横浜博の期間中も博覧会内の美術館として展示がありました。博覧会が終わったあとすぐに正式オープンしました。

 大観覧車のコスモクロックもこの時にできました。会場内にあって、乗るのに長い行列が出来るほどの人気を呼びました。当初は博覧会終了後、撤去される予定でしたが、評判が良かったので、その後、同じ位置で97年まで営業を続けていました。クイーンズスクエアができて眺望が悪くなったので、解体されましたが99年春には向かいの新港地区で新たに営業を始めます。遊園地「コスモワールド」も横浜博会場内(位置は全然違いますが)にあった施設の名前を受け継いでいます。

 横浜博が終わった後も取り壊されず、同じ場所で使われている意外なものに「横浜館」があります。臨港パークのそば、展示場の隣にひっそりと有る丸い建物です。現在では昔のテレビ番組を見ることができる放送ライブラリーとしても有名ですが、当時の展示物である「横浜ガリバーランド」や横浜博の写真も飾ってあり、当時の様子を見ることができる貴重な展示館です。臨港パークも当時の姿を残しています。

 会場へのアクセス交通として、そごう裏手から会場まで、ゴンドラがありました。会場口は今のけいゆう病院の西側あたりです。地下鉄より手軽だし、町ができたら高層ビルの間をぬって走るゴンドラ復活っていうのも面白そうですね。全く計画はないみたいですけど。

 日本丸が横浜に来たのは1985年ですから、博覧会よりもっと前です。博覧会にあわせて海の博物館「マリンミュージアム」とその上の芝生広場が整備されました。今の、ドックヤードガーデンができるのは、ランドマークタワーといっしょですから、もっと後の話です。

 横浜博が終わって、会場が壊されてから、まちの整備がすすみました。最初にインターコンチネンタルホテルができた時は、駅から遠いし、途中何も無い状態でしたが、1997年にクイーンズスクエアができて、ランドマークタワーからインターコンチネンタルまでの歩く道(クイーン軸)ができました。途中、景気の後退もあって、まちづくりのペースは落ちていますが、もともとまちづくりは非常に時間のかかる仕事です。横浜博から20年、30年たった時にこの町がどのようになっているか楽しみです。

追記

2003年8月7日

 横浜館は国際展示場の増築に伴い、この文章を書いたまもなく後、1999年の3月に閉館、取り壊しになってしまいました。山下公園からの鉄道の一部は汽車道になりましたが、別の部分は2002年3月に「開港の道・山下臨港線プロムナード」として整備されました。山下公園から赤レンガ倉庫までの近道として多くの観光客に利用されています。

アルバム

横浜博ゲート 横浜博の時のゲート。この建物は当時のままです
(2003年5月1日撮影)
新しいコスモクロック 新しいコスモワールドとコスモクロック。
(2003年5月1日撮影)
横浜館 横浜館。木造の大きなドーム形状の建物でした。
(1999年3月28日撮影)
ガリバーランド 横浜館内部のガリバーランド。県庁、税関などの建物もデフォルメされながらイメージを忠実に再現しています。赤レンガ倉庫などの新港地区は計画が確定していなかったために今の建物とはずいぶん雰囲気が違います。一部の模型は保存するという話を伺いましたが、どこで眠っているのでしょうか。なくなってしまったのはちょっと惜しい気がします。
(1999年3月28日撮影)
ガリバーランド2 中央上に見える赤い服の人の大きさから分かるとおり、この模型は非常に大きなものでした。
(1999年3月28日撮影)
横浜博模型 横浜館に展示してあった横浜博の会場模型。右下に桜木町駅からの動く歩道と日本丸が見えます。
(1999年3月28日撮影)
山下臨港プロムナード 出来たばかりの山下臨港線プロムナード。この高架線を横浜博の時に乗客を乗せて汽車が走っていました。(2002年3月9日撮影)

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(c) 2003 Masanori Kono