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横浜ちょっと昔のちょっといい話

横浜博の頃

2001年9月29日

 1989年、YES’89、横浜博覧会開催。この話題については以前もここで書いたことがありますが、今回は、その頃の時代について書きましょう。

 89年といえばもう一回り昔の話。その頃皆さんはどこで何をしていたでしょうか。横浜に住んでいた人。他の町に住んでいた人。生まれていなかった人。横浜博を中心にその頃の世界に戻ってみましょう。横浜博が開かれたのは89年3月25日〜10月1日。場所は今のみなとみらい地区すべてを使っての博覧会でした。その頃はバブルの時代の末期。株も土地も終わりが無いほど上がっていました。その影響や、ちょうど市制100年を迎える市が多くあることもあって、地方の博覧会が多く開かれていて、その数は15にも及びます。大きなところでも横浜博の他に、福岡のアジア太平洋博(よかトピア)、名古屋デザイン博などです。翌年には大阪で花博が開かれました。今では大きなパビリオンを集める博覧会の形式が見直されており、愛知万博もその質が問われています。そういった意味で、横浜博は伝統的な博覧会の最後を飾るものだと言えるかもしれません。

 横浜博の当時の新聞を読むと、一番の関心事が入場者数でした。公式の目標入場者数は1250万人。開会前は、これは控えめな数字ということで、強気な目標もあったのですが、いざ、開会してみると予想をはるかに下回る入場者数。自家用車での来場自粛のPRが行き過ぎたためとか、東京に近すぎて、いつでもいけるというイメージから入場者数が伸びないとかの分析がされたため、途中から、パーク&ライドのPRをしたり、夜間割引入場券を発行したりしました。会期前半は雨にもたたられ、一時は目標の達成が絶望視されていましたが、大阪万博から変わらない日本人の性格、会期末になると連日超満員の状態が続き、最終日の3日前にかろうじて目標を達成しました。

 博覧会にはマスコットキャラクターがつきものですね。横浜博のキャラクターは地球を抱いた天使のブルアちゃん。「ブルア」とは「ブルー・アース」にちなんでつけられた名前です。マスコットキャラクターとしては秀逸なものですがそれもそのはず、作成者は手塚治虫氏です。残念なことに、横浜博の始まる直前、89年2月9日に亡くなってしまいました。同じ年には横浜生まれの偉大な歌手、美空ひばりさんも惜しまれてこの世を去っています。

 今ではあたりまえになっていますが、消費税が導入されたのも、この年の4月1日です。日本では初めてのこの税金、導入の時は混乱もあったようです。ちなみに横浜博の入場料金も2800円だったのが、開幕してすぐ、4月1日からは税込みで2880円になりました。消費税なしの期間がわずかだったので、会場内で売られる弁当なども税込み1000円など、端数が出なくしており、消費税導入前の数日間は971円で売られるなど、ややこしいことをしていました。

 横浜で89年にできたものもたくさんあります。7月には金沢シーサイドラインが開通しました。また、4月には横浜アリーナができ、今でもコンサートなどで活躍しています。マイカル本牧もこの年の4月にできました。日本最大規模のショッピングセンターです。なんとか残ってほしいものですね。横浜線の電車もこの年に新しくなりました。いつまでも緑色に青い車両が混じっている編成、前に掲げた「横浜線」の大きな看板・・洗練されていなかった横浜線はこのときから最新の車両になったのです。

 「サラダ記念日」の俵万智さんも、横浜博でトークショーなどを行っています。歌集を出した後、この年に高校教諭を辞め、歌人としてスタートを切ったのでした。

 このような博覧会ですと、いろいろな事件やエピソードもあります。7月には高島町ゲートの近くで営業を行っていた人が、団体駐車場の個人客開放を求めてブルアちゃんのぬいぐるみを着て、ゲートに登って抗議をするといった事件がありましたが、この人が実は何年か後に、鳴き砂の保護を求めてアメリカ目指して風船で旅立った、あの「風船おじさん」だったのです。

 閉幕の直前にはいよいよベイブリッジが開通しました。横浜博が閉幕した直後の11月にはベルリンの壁の崩壊があり、また、バブルが崩壊するなど、世界も新しい時代に入っていきました。

 インターネットの世界では、1989年はWWWの基本形が考案された年で、まだ実際には使われていませんでした。当時は電子メールやネットニュースが研究者のあいだで使用されていたころで、ブラウザが使用されるようになるのは、それから何年も後のことです。それから12年、一番大きく変わったのはネットワークと社会のかかわりかもしれませんね。

追記

2004年4月11日

 文中「マイカル本牧...なんとか残ってほしいものですね」という記述がありますが、この当時マイカルが民事再生法を申請したためにこのような記述があります。マイカル本牧は現在でも営業を続けています。また、消費税は導入時は3%でしたが、現在では5%になり、2004年4月からは総額表示になりました。もっとも本文中のお弁当やチケット類はもともと総額表示でしたが。


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(c) 2003 Masanori Kono