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横浜ちょっと昔のちょっといい話

横浜のバス

2001年11月24日

 手元に1冊の地図があります。「バスルートマップ。」昭和54年現在のバスの路線地図です。そこからは単にバスの路線だけでなく、当時のいろいろなものが見えてきます。今日はそんなバスの話をしてみましょう。

 ルートマップの表紙を見ると、各社のバスの姿が載っています。いまとあまり変わりありません。市内では鶴見を走っている川崎鶴見臨港バスは以前はグレーに紺色の帯だったのですが、今は白い車体に青と赤の帯になっています。他のバス会社は基本的に色は変わっていません。その中で市バスの色が微妙に変わっています。クリーム色とブルーの塗りわけなのですが、以前は紺色だったのが、明るいブルーになりました。昭和52年頃から新しい色になったようです。細かく見ると塗り方は微妙に変わっています。車体の横、ちょうどタイヤのところにタイヤに沿って曲線で波打つような塗り方がありました。バスルートマップに描かれてる写真では神奈中バスが、タイヤの部分が波のように塗り分けられています。市バスも昭和43年までは同じような雰囲気の塗りわけだったようです。そういえば、昔はバスの方向幕(行き先表示機)も小さかったですね。市バスでは昭和57年から今の大きさの方向幕になりました。最初の頃は巨大な方向幕にびっくりしたものです。

 駅の名前が変わることは余りありませんが、バス停の名前は簡単に変わります、というより、バス停の場合近くの目標物がバス停になっていることが多いので変えざるを得ないことが多いのです。バスルートマップを見ていると、懐かしいバス停の名前があります。警友病院前、と言ってもここはみなとみらいではありません。今のバス停で言うと神奈川自治会館。ここに警友病院があったのです。地図を見ると隣に県警本部もありました。このバス停は県民ホールの最寄バス停なのでホールの案内にも載っていました。他にも生糸検査所前は横浜第二合同庁舎というバス停になっています。建物の名前が変わったのでバス停も変わったのですね。また、バス停を増やすのも簡単ですので、何かの機会に増えることがあります。野毛坂と野毛山動物園前の間の中央図書館は以前はバス停がありませんでしたし、山手のイタリヤ山庭園前もそうです。これらは施設ができたので、バス停が増えた例です。

 バス停もそうですが、バスの場合は路線変更も頻繁に行われます。毎年数路線が新設されたり、路線が変わったりしています。特に地下鉄などの電車が開通したときなどは大幅に路線が変わります。この頃は地下鉄は横浜から上永谷までしか通っていなかったので、今の港北ニュータウンのあたりはバス路線が大幅に変わって・・・というより、まだ山しかありませんでした。ベイブリッジもありませんが、大黒ふ頭行きのバスはありました。通勤の人のためでしょうか。近くに大黒町岸壁なんていうバスの終点もありますが、これは今は「横浜さとうのふるさと」というバス停になっています。本牧ふ頭もD埠頭の付け根が終点。海釣り施設もシンボルタワーもまだありませんでした。この他にも細かい路線変更は毎月のように市内のどこかで行われています。

 ところで、市内で無料バスが走っていたのをご存知でしょうか。市営地下鉄が一番最初にできたとき、伊勢佐木長者町が起点だったのですが、多くの人が使う関内からはちょっと離れています。そこで、伊勢佐木長者町駅から県庁前までの循環無料バスが走っていました。昭和47年のことです。

 「バスルートマップ」には大きなバスターミナルの案内図も載っています。今は桜木町のバスターミナルはみなとみらいの口にありますが、その頃は駅から弁天橋に行く道路沿いに安全地帯があり、そこにありました。今でも道が非常に広いのはそのときの名残です。狭いながら駅前バスターミナルだったのです。横浜駅東口もはちょうど今のそごうの所にバスターミナルがありました。当然駅からは歩道橋を渡っていくようになっていました。西口も良く見ると駅前のバスターミナルしかありませんでした。このマップができてまもなくして第二バスターミナルができました。駅前のバスターミナルは、その頃に比べてずいぶん立派になったところが多いですね。

 バスには回数券がありました。昔はぺらぺらの冊子の券でした。市バス以外にも各バス事業者別にあり、一部共同運行されているところでは共通回数券が使えましたが、昭和61年からは8社のどれでも使える共通回数券が登場しました。値段は均一料金ですから各社同じなのですが、発行したのと違う会社で使った場合の、事業者間の精算方法が問題でした。回数券に磁気をつけることにより、簡単に集計できるようにしました。正方形に近くて、中央に磁気の帯がついている回数券を覚えている人はいるでしょうか。いつのまにかこの回数券の見かけなくなり、いまやバスカードに変わってしまいました。

 バス料金は昭和41年から今と同じ均一料金になっています。当時は30円でした。48年に50円、51年に90円、54年に110円、57年に140円、59年に160円とわずか10年ちょっとの間にバス料金は3倍になってしまいました。値上げの幅も大きかったので、値上げする半年ほど前から暫定料金として10円安い値上げを行って、必ず2段階で値上げをしていました。今は210円。でもみなとみらいには100円バスも走っています。最近は、学校の休みの期間は子供料金が50円になることが多いようです。

 とりとめもなく、バスの話を書いていきました。バスって、用事が無いとなかなか乗る機会がないものなのですね。よく見かける割に、あまり乗ったことが無い人も多いと思います。一日乗車券(600円だけれど11〜1月はエコライフチケットとして500円)やファミリー環境一日乗車券(5人までの家族で1日1000円。5人の大人の家族ならなんと1回乗れば元が取れてしまう)などを使うと気軽に何度でもバスに乗れます。休みの日に使える「みなとぶらりチケット(500円)」はお勧めです。このチケットはみなとみらい地区から山下公園周辺・中華街や伊勢佐木町・山手までのバス・地下鉄に乗れるだけでなく、博物館、レストランなど100箇所以上の施設で割引が受けられるのでちょっと得した気分になれます。こんな切符を使ってバスで横浜散策に出かけてみてはいかがでしょうか。

参考文献
  横浜市交通局「のりあい自動車 よこはま市バス60年」
  運輸経済研究センター「神奈川県交通地図 バスルートマップ」

横浜市交通局のページ
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/index.html
みなとぶらりチケットのページ
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/unchin/burari/index.html

追記

2004年4月11日

 この文章を書いた時点ではバスでも「方向幕」が一般的でしたが、2002年頃から電子式の行き先表示機が採用され、急速に普及しています。遠くからでも見やすい明るさですが、オレンジ1色なので、わかりにくいところがあります。

 本文中に書いてあるとおり、電車の新鮮開業により、バスの路線は大幅に変わります。2004年2月のみなとみらい線開業により、路線の新設、廃止、経由変更やバス停の名称変更が行われました。

アルバム

桜木町駅前の旧バスターミナル付近 桜木町駅前の旧バスターミナル付近。道幅は広いですが、バスターミナルの跡形もありません。
(2003年5月1日撮影)

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(c) 2003 Masanori Kono